金銭報酬をなぜ考えているの?

もくじ

「金銭報酬を考える会」では、「金銭報酬」という耳慣れない言葉を使っていますが、要するに「給与」についてあれやこれや議論を重ねてきました。

「自分で給与を決める」などの新たな試みも打ち出されていますが、「そもそもなぜそんなことに取り組んでいるの?」と疑問に思うかたも、なかには居るかもしれません。

そこで本記事では、「金銭報酬を考える」必要が出てきた背景を解説したいと思います。

イーガオは何を目指しているのか

イーガオは現在、SESや受託開発等といったIT/エンジニアリングを主な事業として展開していますが、その根底にある理念は何だったでしょうか?

「中長期方針」のなかでは次のようにうたわれています。

多くの人々に「笑顔とわくわく」を、永続的に「提供し続ける」ことが出来る企業になりたい。

「自己実現」・「良好な関係・環境」・「他者・社会への貢献」を満たすことで、従業員が「笑顔でワクワク」になる会社を目指します。

「笑顔でワクワク」

それが、イーガオという組織にとって、まず目指すべき指針となっています。

では、そんなイーガオにとってビジネスにおける成功とは何でしょうか? 普通は「利益を継続的にあげていくこと/よりたくさんの利益を出していくこと」と考えるところだと思います。

しかしそれだけではないはずです。 イーガオにおけるビジネスの成功とは「他者/社会への貢献をする中で、自身が継続的に活動出来る状態」にあります。

そしてこのような自律自走出来る個人を実現するための組織形態として、トップダウン的に権力や格差が発生する従来型の組織ではなく、自律した個々・チームが協働する「アジャイル型」の組織を目指しています。

中長期方針より

金銭報酬制度になぜ取り組むのか

組織のなかで働いていくうえでは、「ワクワク」とは正反対の、ネガティブ気持ちに向き合わなければならないこともあります。そして従業員が会社に感じる不満は、とくに評価制度にあらわれると言われています。

そのため、給与の決定にかかわる制度をまず見直し、不平不満になる要因を丁寧に取り除くことが、「ワクワク」を創出するための土台作りとして大切です。

しかし、それだけではありません。 イーガオの目指す「自律自走」にとっても重要な要素なのです。 なぜなら、自律自走した個人が、会社(イーガオ)と契約する、という関係が前提にあるからです。

従来型の組織を刷新しようとしているのに、評価制度がそのままというわけにはいきません。

一般的な評価制度とはどのように違うのか

日本型のいわゆる「メンバーシップ型」の雇用制度は「内部労働市場」とも言われているように、各企業がそれぞれの社内事情に精通した人材を育成しています。 各会社ごとの「理想像」が設定され、それとすり合わせるかたちで社員は評価され、役職を与えられます。

すなわち一般的な評価制度では、

が密接にかかわりながら成立しています。

画一的な「理想の人物像」を設定することにもメリットはあるかもしれません。しかしイーガオは

  • それってちょっと面白みに欠けるのでは?
  • むしろさまざまな価値観をもった人々が一緒に働くことで、面白いものが生まれるのでは?

そう考えます。 このような多様性を尊重した報酬制度を整えるために、一般的な評価制度とは異なったアプローチをとります。

  • 「役職任命」については、誰かからの評価に基づいて役職を任命されるのではなく、「各チーム(co-labo)のなかで各メンバーの得意/不得意を考慮しつつ、お互いが信頼し「任せ合う」かたちで役割を分担するものであると考えます。そのため直接の関係性はないものとして「給与」から切り離します。
  • 「教育」については、「どこに向かっていくか」を決めるのは会社ではなく、メンバー本人の意向であり、それを踏まえたセルフキャリアプランニングのなかで取り組むべき要素であると考えます。やはりこれも「給与」とは切り離します。

すなわち、従来型の「評価制度」では密接にかかわっていた要素を分解し、バラバラにして考えます。 込み入った他の要素をそぎ落として、給与制度=金銭報酬はそれ単体で考えていこう、というのがイーガオの考え方なのです。

イーガオにおいて「報酬」とは何なのか

「金銭報酬」についての取り組みは、社内の一部から「おカネの追求を強く考えているように見える」という声も挙がっています。

たしかに中長期方針のなかでは、

お金に関わる経済的な豊かさ以上に感情的な報酬が「笑顔でワクワク」の源であると考えます。

と宣言していたはずだったのに……。これと矛盾してしまっているのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

たしかに「笑顔でワクワク」を実現するためには、仕事を通じた「達成感/満足感」が大切なのは間違いありません。 とはいえ、企業の土台にあるのは、経済活動であることを踏まえれば、給与=「金銭報酬」の制度がきちんと整っていればこそ、こういった「感情報酬」を享受できるのではないでしょうか。

別の見方をすれば、このとき給与の決定に際してはそれ以外の要素を切り離して考え、そこに心理的・感情的側面を持ち込まないようにするために、まずはしっかりと「金銭報酬」を制度化するとも言えます。 ここでも、「バラバラに考える」ことが大事なのです。

そして制度化することは、すなわち金銭報酬を決めるやり方を「見える化」し、メンバーがより納得できるものを作っていくことにつながります。

おわりに

自律自走する組織を目指し、一般的な評価制度とは異なる独自のアプローチをとったからといって、すぐに「不平不満がない」制度を構築するのは難しいでしょう。 いや、むしろ、100%の答えというのはそもそも存在しないのかもしれません。

しかしそれでも「できるかぎり満足できる仕組み」絶え間なく挑んでいこうとすること。そしてそれを、メンバーひとりひとりの協力のもとで作り上げていくことこそが、イーガオの持ち味なのだと思います。

前回の記事で、イーガオのメンバーは「単価感の共有」を受けたことに触れました。

しかし「単価感≒給与ではない」ことには注意が必要です。 「自分の単価感はこれくらいに決まったから…」とそこで(受け身で)終わってしまうのものではありません。 メンバーが市場内での自分の位置を把握し、そのうえで給与交渉に(主体的に!)臨むための、一つの武器なのです。

ここで大きな話をすると、雇用主と労働者の間には、賃金にかかわる情報の格差が生じがちなことが指摘されています(経済学では「情報の非対称性」と呼ばれています)。 この点でイーガオという組織にとっても、この溝を埋めていくための、一つの挑戦と言えるかもしれません。

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