たまにはちょっと真面目に。戦争にまつわる考えさせられる映画9選+おまけ2
WRITER
藤田
映画とニチアサ特撮を愛する、PythonとPHPを使うサーバーサイドエンジニアです。
もくじ
みんな今すぐ映画館でシャドウズ・エッジを観ろ。ジャッキーチェンも出てるアクションサスペンスの弩級の傑作です。今年の総決算やるのはちょっと待った!とこの時期に傑作が駆け込んでくることあるある。アクションがマジで気持ち良すぎる、初速がすごくて開始三分でおいおいこれちょっと久しぶりにとんでもない映画に当たったな……!?と思った勢いのまま一切ゆるまず最後まで駆け抜けていきます。
余談はさておき、今回の映画紹介のテーマはずばり「戦争」に関する映画です。重い問題って映画という多少マイルドな形でも向き合うのはどうしても腰が重いですが、年末年始で少し時間がある時に。お休みの時間をちょっとだけ、世界のことを考える真面目な時間に使ってみませんか。
とはいえずっしりきちゃうと思うので、同時公開で短く楽しい映画を集めた記事も書いています。こっちを口直しに摘みつつ、ほんの少しだけ、自分と世界に向ける目に新しい視点が加わるきっかけを作れたら嬉しいです。しんどくなりすぎないように観終わったらおやつとか自分を労われる準備をして、元気な時に観てみてね。
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ペリリュー -楽園のゲルニカ-
これがいま映画館で公開しているから年末年始に見てほしくて、今作を紹介するためにこのブログを書いたと言っても過言ではない。太平洋戦争末期、激戦の舞台となったパラオのペリリューという島での兵士たちの物語です。戦火の苛烈さ悲惨さはさることながら、この映画のすごいのは終戦後にそれを知らず潜伏生活をしていた兵士たちの暮らしが始まってからの歳月がうんと長いところ。国に集団に殉ずる為に生きることを強いられている姿の悲しさ恐ろしさ、傍目から見るとなんで戦争が終わったのにって思うけどそれを疑えないこの状況を作ってきた戦争という空気の恐ろしさが凄まじい映画です。絵柄がマイルドめなアニメで、アニメーションの演出も素晴らしい!傑作です
木の上の軍隊
先述のペリリューと同じように、終戦を知らずに仲間が来てくれるそうしたら命を賭けて反撃だと盲信して潜伏生活を続けていた沖縄戦に関わった兵士の話です。どちらも見ると、かなり似てるなーと思うけどどちらも実話がベースなので、戦争によってこういう状況が各地で起こっていたことを実感できて切なくなります。こちらは実写なので、戦地での人が亡くなっていく傷ついていく凄惨さがより克明です。
哭戦 オペレーション・アンデッド
タイのゾンビ映画です。ゾンビ映画なのに戦争がモチーフ?と思うかもですが、実はこの映画かなり真面目に戦争の構造を描いて向き合うことをしています。パフォーマンスの為に死ぬとわかっている戦地に投入される現地人、安全圏から駒を動かすように人が死ぬ作戦を立てる指導者、故郷の家族に会いたいと泣く望んで参加したわけではない占領者側の兵士と、戦争の縮図をギュッと詰め込んでいます。舞台は太平洋戦争下のタイのとある島、日本軍が秘密裏に開発した生物兵器が運び込まれるも、それが逃げ出して暴走します。その兵器がゾンビ的な肉体改造で、そして伝染するもので、あっという間に島に広がっていきます。この映画でのゾンビの何が悲しいって、ゾンビになっても結構自我があるんですよね、仲間や家族への感情もあるがもう人間には戻れない。その悲哀と、ゾンビ同士の団結のような生きたいと願う本能がとても切ない作品です。
マルモイ ことばあつめ
日本占領下の韓国では、日本語の使用が強要されている中、韓国語の辞書を作ろうと奔走する人たちの実話をベースにした映画です。監視の目を掻い潜り集まって、いろんな地方の言葉を収集して辞書を編纂していくけれど、やがてその活動がバレて……あるものについて、うちの方ではこう言うんだようちではこう、といきいき語る姿に、言葉って本当に人の営みと密接に結びついていて、これを奪うためにいろんな植民地統治で言語の統制がやられてきたんだなと痛感します。自分の言葉で考えて話して記録をできることがどれだけ大事ですごいことなのか、考えさせられます。
ハウス・オブ・ダイナマイト
他の作品と違って、実際の戦争を描いた作品ではないですが、薄氷の平和と戦争というかそれに至らないための抑止力についていまの世界をかえりみさせられる一本です。現代のアメリカを舞台に、出どころ不明のミサイルが突如発射されて向かってきているのを捉えて奔走する軍や政府の姿を描きます。ここの奔走の時間が本当に短時間であまりにも唐突で、事態を知らない街中の人たちはあまりにも普通に暮らしていて、でも実際こういう事態が起きるってこう言うことだよねと背筋が凍ります。
関心領域
郊外の広い家と庭で戦時下ながら豊かな生活をおくる裕福そうな家族の姿、戦争と関係ある?と思っていると、その家と近くの土地を隔てる高い塀の向こうで何が起きているのか、なぜこの家族はここにいるのか、家のいろいろなところにある素敵で豊かな生活品はどこからきているのか、描写でじわじわとその答えを突きつけてきます。銃声、遺体を燃やす煙、ガス室、壁の向こうにあるのは収容所です。目を逸らして自分の世界である家だけを見ようとする人々の姿が怖いし、自分はこうならないでいられるだろうかということも怖くなります。
独裁者
稀代のコメディアン、チャップリンが痛烈にナチスを風刺した一本です。チャップリン作品なのでクスッと笑えるコメディパートももちろんたくさんあって今回の作品たちの中では比較的見やすい。戦争で全てを失い住んでいた街に帰ってきたユダヤ人の主人公が、ふとしたことからとある独裁者に間違われて、最初は独裁者のふりをしてやり過ごすんだけど、戦地へ向かう兵隊たちへの激励のスピーチを任されるけど咄嗟に本音を語る……この最後の長い演説が、本当に心にきます。平和って命って戦争ってというのをすごく考えさせられる、映画史に残る名作です。
風が吹くとき
穏やかな田舎町で暮らす仲睦まじい老夫婦の日常が、ある日遠くに落ちた核爆弾によって一変します。緩やかにでも確実に死に向かっていく姿、政府がくれたパンフレットのやり方に従って身を守っているから大丈夫だよ時期に良くなるさと明らかに効果がないのに楽天的に避難生活を続けていく姿にゾッとします。柔らかい絵柄の絵本調なアニメだけど、そんな可愛い絵のキャラがどんどん衰弱していくところが怖い。
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
イスラエルによって今なお侵攻が進んでいるパレスチナ人の居住区で、現場を世界に発信している青年の元に、その活動に協力してこの状況をなんとかしようと願うイスラエルの青年が訪れます。実際にいま行われていることをその場でカメラで記録した、ドキュメンタリー映画です。理不尽な理由で住処を壊され出ていくことを余儀なくされる、突然軍隊がやってきたり破壊行為を見物に来ているイスラエル人の姿を映したり、撮影者やその家族にも危険が及んでいる現状を生々しく伝えています。
おまけ:夏のあらし!
絵柄とタイトルが可愛い感じだしキャラもいろんなタイプの女の子がいるし、萌えアニメ系?と思うこと勿れ、かなり骨太な戦争を描いた漫画です。主人公はとある喫茶店で、あらしという少女と出会って仲良くなっていきます。幽霊を自称するあらしは、主人公と手をつなぐと過去へ飛ぶことができるという不思議な力を持っていました。タイムスリップしてついた先は戦時下で空襲の続く横浜。過去に飛ぶことを繰り返して、少しずつ助けられる人を助ける主人公たち、そんな中で戦時下を生きた少女達の思い当時の人々の暮らしや思い、願いに向き合っていく物語です。いろんな戦争映画や本、漫画を観たり読んだりしてきましたが、この漫画の空襲の描写が私には一番怖くて、初めて読んだ時から目に焼きついています。
おまけ2:ベルリンは晴れているか
世界大戦後の荒廃して復興に向かうドイツが舞台のミステリー小説です。知人の死への関与を疑われた女性が、疑いを晴らし彼の親族に訃報を告げるために荒廃した町を奔走します。そこに至るまでのナチス独裁下の生活の様子、周りの人や世相の様子、守れなかった収容所に連れて行かれた知り合い、占領兵に襲われた記憶、あまりにも生々しく情景を描く描写が凄まじくて、結構終盤までドイツの人の書いた翻訳小説だと思っていたら筆者が日本人でかなり驚いた。誰が彼を殺したか?にまつわる謎の部分もかなり面白くて、久しぶりに夢中になって一気に本を読みました。
そんな感じで、映画9本と漫画と小説の紹介でした。
なお、社内のメンバーにおかれましてはこんなテーマの映画が知りたい!などなどリクエストもいつでも募集中ですので、リクエストありましたらslackの雑談チャンネルなどでお気軽にお声がけくださいませ。
ここまで読んでくださってありがとうございました!